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最新の分類について

フグ管理法

 種類:淡水産のフグは、主にアフリカから来ます。小型種から超大型種まで様々です。汽水産のフグは、多くが東南アジアのものです。海産のフグは世界中からやってきます。
 アフリカからはmbu種やlineatus種(ファハカとも呼ばれます)といった大型種から、miurus種・schoutedeni種等の小型種まで、実に様々な種類が輸入されます。mbu種等は天然で60aを超えますし、lineatus種も40a位まで成長します(海外の古い書物では20aと有りますが、そんな可愛いものでは有りません)。逆にmiurus種・schoutedeni種・duboisi種などは10cm内外です。どの種も完全な純淡水産種で、塩分は全く要らないものです(1種を除く。理由は後程)。
 東南アジアは汽水フグの宝庫です。お隣の中国ではフグを漢字で河豚と書くように、メガネフグなど川で普通に見られるものです。但し純淡水産とは考え難く、長江・黄河などは大河ですから、相当上流まで海水の影響を受けているものと思われます。反面ミドリフグなどは完全な純淡水域でも良く見つかるそうで、その辺りも飼育に反映させる必要が有るようです。ミドリフグに似る8の字フグ(八の字フグとすると無意味です)は、海水で育てるととても美しくなるのですが、記述では純淡水棲です(数種シノニムとなっており、地域的な差があるかも)。この他はアカメフグやメコンフグ、レパードパッファー(愛称おじいさん)、ブロンズパファーなど様々な種が有ります。
 アマゾン水系からはasellus種・psittacus種などが輸入されます。ミドリフグの柄を雑にしたような感じで、サイズも同じくらいになります。塩不要といわれていますが、幾らか塩分があったほうが矢張り美しく見えます。
 ハコフグの仲間は水槽の人気者です。ポピュラーなミナミハコフグ・コンゴウフグをはじめ、背中に山を持つラクダフグ・雌雄差がはっきり解るクロハコフグ・クロハコフグより黒いヤミハコフグ・ウミスズメの仲間・テングハコフグ・非常に高価なWhite-barred BoxfishやShow's Cowfishといった大型種まで様々です。
 キンチャクフグの仲間もよく見かけます。ハコフグよりも繊細なカラーリングですから、よりマニアックな楽しみ方が出来ます。但し行動が過激なので、管理はより煩雑になります。
 通常のフグも見られますが、これらはより大型になる上、攻撃的な為更に管理が煩雑になります。心して飼育しましょう。スジモヨウフグ・オキナワフグ・モヨウフグ・ワモンフグ・コクテンフグ・サザナミフグ(汽水魚として幼魚が来る事が有ります)等が主な種類です。
 ハリセンボン・イシガキフグの類も稀に見られます。中でも愛敬のある表情のヒトヅラハリセンボンは、最も親しまれています。但し50aに達するほどの大型種ですから、設備が大変です。カリブ海からはBurrfishなるイシガキフグの仲間が数種、稀に来る事が有ります。中型種ですし大人しいので水槽に向くようですが、餌付きが非常に悪い(輸送に長い時間かかる事も原因でしょう)。
 同じフグ目のモンガラの仲間はモンガラカワハギ・ムラサメモンガラ・クラカケモンガラ・タスキモンガラ・ムスメハギ・アカモンガラ・ナメモンガラ・クマドリといった面々が輸入され、人々を困らせます。理由は後程。
 カワハギは余り輸入されません。せいぜいテングカワハギやニシキカワハギとその一派、ヒゲハギ・ギマの類がぽつぽつ見られる程度です。理由は後程。
 飼育・管理:アフリカ産淡水フグは、ごく普通の飼育設備で充分です。特に流れも要りません。但しmbu種以外は単独飼育が基本ですし、mbu種にしてもPolypterus等と混泳させると、背鰭・尾鰭を齧ってしまいますから、混泳させるにしても慎重にしなくてはなりません(mbu同士の混泳は非常にやばいです)。逆にフグは餌を暫く見つめてから飛び掛かるタイプが多いので、見つけ次第食ってしまうパーチ類との混泳は痩せる原因になります。miurus種は唯一白点病に罹り易い種です。砂に潜るタイプですから、細かな砂(大礒は不可。川砂・海砂等を推薦)を潜れるくらい敷き詰めます。飼育当初は人工海水の素を幾らか溶かすと良いでしょう。ブロンズパッファーはフグというより、モンガラカワハギのような印象を受けます。販売サイズが小さく、行動が可愛く見える分注意して下さい。水槽の材質は大型種ではガラスの方が良く、アクリルでは直ぐに表面を歯で傷だらけにしてしまいます。歯の強さはプレコも真っ青!なくらい凄いので気を付けましょう。
 東南アジア産種はアフリカ産種よりも、塩分依存性が高い為、入手し易い(価格が安い)反面飼育器具・設備に一工夫必要です。これはオセアニアから来る種も同様です。最もポピュラーなミドリフグは終生純淡水で飼育・管理が可能とはいえ、大きくなってきたら半海水くらいにしてやると、身体の輝きが見違えるほど美しくなります。8の字フグなどは純海水で管理した方が良いくらいで、どういう目的で飼育するのかが(種類のコレクション・個体を美しく仕上げる等々)ポイントです。同種同士の混泳で心がける事は、常に満腹状態を保たせる事です。腹が減るとフグは直ちに気が荒くなり、お互いの鰭を噛み合うようになります。この怪我が元で水黴がついたり(純淡水・低濃度の塩分の飼育水で頻発)、弱い個体が痩せ細ったり食われたりします。給餌は腹の形が変わるほど与えて良く、その位与えないと意味が無いようです。
 汽水の場合、モーターは勿論海水兼用(耐塩性)の機種を用います。特に半海水クラスになると、塩垂れが生じるほどになる為、淡水専用機は決して使ってはなりません。濾過材は珊瑚砂を半分以上の割合で、水流は有った方が望ましいです。底砂の種類は特に選びませんが、フグが遊べる様細かい砂を敷くのがベストです。  中国産汽水フグは、その魚雷型の姿からも解るとおり、非常に攻撃的です。混泳出来ない事はないのでしょうが、相当ゆとりのある水槽と給餌が必要です。基本システムは汽水用で良いのですが、砂に潜る為必ず細かい砂(大礒砂では駄目)を敷くようにします。余り馴れる種では有りません。非常に捕食性が高く、餌には間髪を入れずに飛び掛かります。
 東南アジアのその他の淡水・汽水フグは、水質・システムともに他と余り換える所は有りません。但し静かに闘争する為、複数飼育は基本的に避けるべきで、狭くとも文句は言いませんから、単独で管理するのが良いでしょう。フグは魚同士よりも、飼育者とのコミュニケーションを求めてきます。犬を飼育するような感じで付き合うと良いでしょう。
 アマゾン水系のフグは、体型こそ中国産汽水フグに似ますが、余り砂には潜らずに活発に遊泳します。遊泳空間は広く取り、遊び場(水面まで突き抜ける流木など)を用意してやると良いようです。純淡水で管理する際は頻繁に水を替え、pH降下を防ぎます。出来るという書物も多々有りますが、個人的には複数飼育には向かないと思います。
 ハコフグは性質的には、非常に管理し易いグループです。管理上特殊な要求はしません。同種・異種との混泳も性質的には何の問題もなく、成長遅く小食で水も汚さず、非常に人懐っこい飼育に理想的な魚種です。ただ一つの欠点を除いては。ハコフグは苦しんだり死亡するときには、強力な粘液毒を出します。小型種でも60〜90a水槽に与えるダメージはものすごく、大型種に至っては200〜300a水槽を壊滅させるほどです。明らかに粘液毒であるという証拠は、エアーレイションの泡が洗剤のようにぶくぶくと吹き上がる所からも解ります。しかも他魚はもとより、他の個体のフグすら倒してしまう為、混泳水槽では絶対にハコフグを殺す事が出来ません。水族館で混泳させて大丈夫なのは、流石にあの容積が有れば、直撃は免れるといった所だからです。
 混泳はOKといいましたが、動きの鈍さから逆に相手を選ばなくてはなりません。餌採りが大変下手な為、行動の素早く荒い種はまず駄目です。動きが鈍い為、他魚にちょっかいを出す種もいけません。苔取りに良く入れられるギンポも、水深を充分に取らないとハコフグを小突き回します(なぜ皮膚に口を付けても平気なのか、良く分かりません)。非常によく起こる間違いは、モンガラ類との混泳です。双方とも体の半分が頭である所から、ユニークなもの同士と混泳を考えがちです。しかし只でさえ気の荒いモンガラに、ハコフグは虐待の対象でしかありません。この最悪の組み合わせを行った水槽では、眼球を抜かれたハコフグが空しく鰭をばたつかせる姿を見る事でしょう。この光景は魚を飼い慣れた人にも相当ショックですから、絶対にやってはいけません。
  時々キューブ状のミニミニハコフグ・コンゴウフグが販売されています。この状態では充分な給餌がものを言います。日に3回以上は餌を与えましょう。稚魚の場合は動物質の餌を多く与え、なるべく早く大きくした方が管理が楽です。ハコフグの仲間の中では、クロハコフグが唯一非常に餌付きが悪く、餓死が頻繁に見られます。この種はハコが変形するほど痩せてしまう為、原因は餌や性質が由来であるとも断定出来かねます。自家中毒の可能性も有り、情報が待たれます。
 キンチャクフグの仲間はどれも10a程度と小型で、小さな水槽で終生管理可能なものです。相当気が強い所がある反面、体型が異なる魚種にはさほど目くじらを立てませんので、混泳も思ったより広い範囲で可能です。人にすぐ馴れ、姿を見れば顔が変形するくらい、壁面を吻端で擦ります。そのためガラス水槽でも傷だらけにしてしまいますから、覚悟しておきましょう。自然条件下で砂に潜るかどうか解りませんが、飼育下では常に人を意識している為、一切底砂には潜りません。珊瑚岩を置くと、暇を持て余したときなどは、付着した何かをがりがり齧っています。ストレス解消にも一役買っているようなので、是非入れてやりましょう。
 通常の海産フグ類は、飼育がとても楽ちんです。病気にも罹りませんし、餌喰いは非常に良い。とにかく大型になる為、単独飼育が基本です。混泳は水槽サイズさえあれば出来ます。魚種としてはフグと同長・もしくはそれより一回り大きな活発な種が良く、同じ毒だからといってオコゼ類を入れると虐める場合が有ります。モンガラとの混泳も大丈夫な場合が多いですが、余り危ない橋は渡らない方が良いでしょう。底棲サメ・ウツボとは大丈夫そうに見えますが、夜行性の連中とは混泳させない方が無難でしょう。スジモヨウフグ・コクテンフグは大人しい部類に属しますが、ワモンフグは相当狂暴です。いずれの種も大食漢なので、水質悪化には注意しましょう。
 ハリセンボンの仲間は見かけの割に大人しく、しかも水質悪化に敏感な上白点病に犯され易く、毒が無い分、通常の海水魚と同様の慎重さが求められます。餌食いは非常に良いのですが、魚肉のみを与えていると痩せてきます。水槽内で成長させるのが意外に困難な為、他のフグを手がけてからにしたいものです。但し混泳には殆ど問題は有りません。しかしカリブ海から来るBurrfishは更に扱い難く、餌付かせるだけでも大変です。まず他魚との混泳は避けます。同種の複数飼育は問題ありません。複数飼育は水槽を広くする必要が有りますが、単独飼育であればさほど広くする必要は有りません。隠れる性質は有りませんが、レイアウトは自然に近く、珊瑚岩や海藻などを配してやります。ポイントは蝦を2〜3匹放しておく事です。飼育者以外は余り出入りしない場所が望ましく、言うなればディスカスっぽく扱ってやりましょう。水温は低く設定します。24℃くらいがベストです。水温が上昇するとどんどん調子が崩れますから、クーラーは必需品です。
 モンガラは同じフグ目に属しますが、見かけの愛敬からは程遠い凄惨な事態を引き起こすグループです。同種・異種とも基本的に混泳には向きません。唯一アカモンガラのみ同種混泳が出来ますが、よくショップで見られるムラサメモンガラは、同種同士でも喧嘩を繰り返し、最後には一匹になってしまいます。クマドリ・ムスメハギはそれでも穏健な方です。飼育そのものはやさしい為、単独飼育で楽しみましょう。注意点としては噛む癖が有り、稀にエアーチューブを噛み切る事故が有る様なので、特に必要が無ければエアーレイションをかけない方が良いでしょう。
 カワハギはフグ目中、最も飼育が厄介なグループでしょう。通常の海水魚を飼育するという感覚では駄目で、無脊椎水槽の中でゆったりと育てたいものです。但し、カンザシゴカイや小さ目の甲殻類は襲われますから、同居させないで下さい。シャコガイも外套膜を齧られたという報告も有ります。
 :フグは何でも食います。通常の淡水フグは貝が大好きです。水槽内で発生するモノアラガイ・ヒラマキガイを与えると、mbu種などは飛びついてきます。普通巻き貝を好む種は、他のベントス(赤虫など)・配合飼料等も良く食います。miurus種は小魚を非常に好みますが、ベントスや配合飼料には殆ど見向きもしないひねくれ者です。海棲種は余り貝類を好みません(同じ軟体動物のタコ・イカも余り好きではないようです)。甲殻類は全ての種が好物です。ここで餌やりのポイントは、動物質だけではいけない!という事です。だからといって水草や海藻を与えても食ってくれません。是非とも配合飼料に餌付ける様して下さい。
 病気:フグは殆ど病気知らずです。ただし、miurus種・ハコフグ類・ハリセンボン類は白点病に罹り易く、予防に努めます。miurus種に関しては、汽水フグと同様の管理が良いくらいです。フグは耐塩性に優れますから、塩を加える事に躊躇する必要は有りません。更に汽水魚を純淡水で管理すると怪我から水黴がついたり、体色が黒化したりします。塩分濃度を上げる事により治りますから、面倒がらずに行って下さい。

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