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ピラニア(ナッテレリ種)管理法



 大量に養殖されており、入手も容易なのがSerrasalmus nattereriです。水族館などで通常ピラニアといえば、本種を指すほどにポピュラーになりました。家庭で飼育するには少々難が有るものの、細かいカラシンを観察するよりは、興味深い生態が楽しめます。『人食い』と称されますが、ネオンテトラもあのサイズでしたら人を襲うかもしれません(牙が凄い)。但しコロソマ等のパクー類とは、扱いが全く異なります。
 飼育管理:親指の爪ほどの幼魚が、毎年大量に輸入されてきます。単独飼育ならば兎も角、小さな個体は複数売りが基本です。なるべく全ての個体を育て上げるようにしましょう。
 最大のポイントは成長差を作らないことで、これには充分な餌やりが必須条件となります。食う個体だけが食うのではなく、全ての個体が満腹になるようにするので、システムもこれに合わせるようにします。
 底砂は敷かないか、細かなものを薄く敷く程度に止めます。幼魚には赤虫などを与える為、さほど食い散らかしませんが、大きくなってくると生餌・配合飼料とも食い散らかす為、底砂を厚く敷くとたちまち腐敗し、ガスが溜まり水質が悪化します。水流は有っても無くても構いませんが、濾過能力だけは最大になる様セッティングをします。シェルターは広い水槽でしたら入れても構いませんが、90cm以下の水槽なら入れない方が良いでしょう。負け個体の発見が遅れ、翌朝水槽が惨殺体で濁ってしまうでしょうから。水替えは徹底的に行います。最低週一回、出来れば二週に三回程度がベストです。
 事故は起きます。最も危険なのが、生餌(金魚)を与える水槽でエアーレイションをすることで、陰に逃げ込んだ金魚を追い込んだ際、エアーチューブをピラニアが食い切る可能性が有ります。食い切れないときには引っ張ったりしますので、ポンプからチューブが外れ、水槽の水がみんな伝って流れ出すことが有ります。エアーレイションは水槽内で行わず、濾過槽内にエアーカーテンを敷くなどして対処しましょう。大型個体になると、サーモスタット・ヒーターのコードもやばいです。出来れば室温で温度管理などし、コード類を水槽内に配置しない様にしましょう。濾過槽が広ければ、そこに保温機具を設置するのも良い方法です。
 餌:なんでも食います。混泳(勿論ナッテレリ種同士)させるならば、生餌(金魚など)は極力与えず、配合飼料のみで大きくします。幼魚の場合、空腹になると相手の眼球を抜きます。ショップなどで良く観察し、眼球の無い個体がいたら、そこの個体は全て今空腹であると認識して下さい。極端にサイズの異なる個体がいるのもそうです。特に購入当初の幼魚のうちは、腹部の形が変わるほど与えなくてはなりません。
 大きくなってくると、配合飼料だけでは物足りないという個体が出てきます。充分に餌を与えていても、なんとなく他の個体を小突き回したりしていたら、餌の種類を増やさなくてはなりません。最も良いのは缶詰の仔海老で、魚の味を覚えずに済みます。又、ある程度の色揚げ効果も期待出来ます(透明の飼育水では、赤くなることは有りませんし、赤い個体でも色が褪せてきます)。
 その他のピラニア:分類は錯綜し、最近では新説が幾つか登場しています。私は余りピラニアには直感が働かないので、かなり古い文献「Jacques Gery's Characoids of the World」(1977-t.f.h.社刊)にのっとって以下に示したいと思います。種類が分かればよし、と言う感じです。

セルラサルムス科 FAMILY SERRASALMIDAE:3亜科
 セルラサルムス亜科 SUBFAMILY SERRASALMINAE:1属
  セルラサルムス属 Genus Serrasalmus:5亜属
   ピゴプリスティス亜属 Subgenus Pygopristis:2種
    01 Serrasalmus denticulatus (Big-Toothed Piranha)
    02 Serrasalmus(Pygopristis) antoni (=S.aureus?) (Anton's Piranha)
   プリストブリコン亜属 Subgenus Pristobrycon:4種
    03 Serrasalmus aureus (Yellow Piranha)※
     +Serrasalmus gymnogenys
    04 Serrasalmus calmoni
     +Serrasalmus altvei
     +Serrasalmus bilineatus
     +Serrasalmus coccogenys
    05 Serrasalmus serrulatus (Serrated Piranha)
     +Serrasalmus scapularis
    06 Serrasalmus striolatus (Black-Tailed Piranha)
   セルラサルムス亜属 Subgenus Serrasalmus:7種
    ○humeralis-group
     07 Serrasalmus elongatus (Elongate Piranha)
     08 Serrasalmus hollandi (Holland's Piranha)
     09 Serrasalmus humelaris
      +Serrasalmus caribe
      +Serrasalmus eigenmannii (Eigenmann's Piranha)
      +Serrasalmus iridopsis
      +Serrasalmus nalseri
    ○rhombeus-group
     10 Serrasalmus rhombeus (White Piranha,Diamond Piranha)※※
      +Serrasalmus rhombeus marginatus
      +Serrasalmus gibbus (Silver-Scaled Piranha)※
      +Serrasalmus humeralis gracilior
      +Serrasalmus medinae(i)
      +Serrasalmus niger (Black Piranha)
     11 Serrasalmus sanchezi (Sanchez's Piranha)
     12 Serrasalmus spilopleura (Fire-Mouthed Piranha)
     13 Serrasalmus brandti
      +Serrasalmus fernandezi
   ピゴケントルス亜属 Subgenus Pygocentrus:1種
    14 Serrasalmus(Pygocentrus) piraya
   タドディエレルラ亜属 Subgenus Taddyella:2種
    15 Serrasalmus nattereri (Red-Bellied Piranha)
     +Serrasalmus notatus (Black-Eared Piranha)
    16 Serrasalmus ternetzi
 カトプリオン亜科 SUBFAMILY CATOPRIONINAE:1属
  カトプリオン属 Genus Catoprion:1種
   17 Catoprion mento (Scale Eater,Wimple Piranha)
※は我国では両方ともイエローピラニアと扱われる事がある。
※※は様々な地域型が有り、それぞれに流通名がついている。
 ピラニアは写真が横向きな為、それぞれが見分け難くなっているが、実物は質量感が全く異なるため、一度見ると覚え易い。

 セルラサルムス科 (FAMILY SERRASALMIDAE)はミレウス亜科・セルラサルムス亜科・カトプリオン亜科からなる小さなグループですが、アクアリウムでは大変重要な位置に有ります。ミレウスと言うと余り馴染みが無いかも知れませんが、ここにはメティニスやコロソマ、ミロスソマなどが含まれるからです。現地でもピメロディラと並んで、最重要水産魚の一つでありましょう。
 形態は似ているものの、食性から違う位置にあるセルラサルムス亜科とカトプリオン亜科を併せてピラニア(ピラムベーバとピラニア)と呼ばれています。意味はserrate=鋸歯を持つ・salmo=鮭鱒(なんでしょうかね。美味しいと言うことなのでしょうか)。
 ピゴプリスティス亜属 (Subgenus Pygopristis)は体が薄っぺらい上、体高も著しいわけでもなく、外見はテトラ様です。但し口の開き方はピラニアのものです。背部は青みがかり、尻鰭は黄〜オレンジがかります。歯が左右相称、5個所の歯尖が有ります(これを生前に確認するのは難しいですね)。尻鰭の基部は、2列以上の鱗列で覆われません。そして何よりの特徴は口蓋に歯を持たないことです。総排泄口以降に棘は有りません。分布域はアマゾン水系とガイアナ、ベネズエラ。2種が有り、セルラサルムス・デンティクラトゥス(Serrasalmus denticulatus)は正にこの記述どおりの種ですが、セルラサルムス(ピゴプリスティス)・アントニ(Serrasalmus(Pygopristis) antoni)はより狂暴なピラニアに似ます。記載されている原画には、尾鰭の尾柄に近い部分に、強く幅広い黒帯が走り、側線の走り方がやや緩やかなようです。アントニーピラニアとしてきている個体は、両者が混同されていると見て良いでしょう。共に危険性が全く無い大人しい種類です。
 プリストブリコン亜属(Subgenus Pristobrycon)はピゴプリスティス亜属に似ますが、更に体高が高く、ピラニアの頭を持ったメティンニス属といった印象を受けます。歯は左右相称にならず、歯尖は3個所に満ちません。尻鰭基部は2列以上の鱗列に覆われます。眼球の後ろは著しく凹みます。眼球は大きく、頭の殆どの部分を占めます。口蓋の歯は鈍形、精々3〜4本でいずれ脱落します。成魚の鰓蓋はつるつるになります。大きな群れを作ることは有りません。ガイアナ・ギアナ・アマゾン水系下流に生息します。肩部の班を欠き、背鰭の始まりが体の中心に位置するものにセルラサルムス・ストリオラトゥスSerrasalmus striolatusとセルラサルムス・アウレウス(Serrasalmus aureus)が有ります。ストリオラトゥス種は歯を欠き、稀に学名どおり縞が走ります。総排泄口より後に棘は有りません。背鰭-脂鰭間は背鰭長より短めです。尾鰭の条数は30〜32本です。アウレウス種は口蓋に2〜3本の鈍い歯を持ちます。総排泄口の後に、一組の棘を持ちます。背鰭-脂鰭間はほぼ背鰭と同長です。学名を直訳すれば、イエローピラニアは本種と言うことになります。gymnogenys種は本種の同種異名とされますし、ピゴプリスティス亜属命名に絡むアントニ種も、アウレウス種の変異に過ぎないとされます。肩部に班を持ち、体にも班が散り、背鰭の始まりがやや後方に位置するものにセルラサルムス・カルモニ(Serrasalmus calmoni)とセルラサルムス・セルルラトゥス(Serrasalmus serrulatus)が有ります。カルモニ種は尾鰭端に幅広い黒帯が走り、背鰭-脂鰭間は背鰭長に近く、尻鰭条数は30本以下です。セルルラトゥス種は尾鰭に黒帯は走らず、背鰭-脂鰭間は背鰭長よりやや短め、尻鰭条数は30本以上有ります。カルモニ種は犬歯のある種と言う意味で、bilineatus種・coccogenis種・altuvei種が同種異名とされます。セルルラトゥス種は勿論鋸歯のと言う意味です。配色に特徴が有り、一度見れば忘れることは有りません。scapularis種が同種異名とされます。
 セルラサルムス亜属 (Subgenus Serrasalmus)は真性セルラサルムスグループと言え、歯は狂暴に尖り、8〜10本に達します。老成魚は抜け落ちてしまうことも有ります。背鰭条数は13〜16本、尻鰭条束は28〜36本、体は厚味を増し、体高は低い。単独で人間を襲うことはなく、その記録も一つとしてありません。鰓蓋は甲冑様です。特徴から2つのグループに分けられ、humeralis Groupは2〜3本から5本程度の幅広い歯を持ちます。セルラサルムス・ヒュメラリス(Serrasalmus humeralis)は体長が体高の1.8倍、セルラサルムス・ホルランディ(Serrasalmus hollandi)は体長が体高の2倍、セルラサルムス・エロンガトゥス(Serrasalmus elongatus)は体長が体高の2.5倍も有るもので、先ず見間違うことは有りません。caribe種・eigenmannii種・iridopsis種・nalseri種はヒュメラリス種に統合されます。ヒュメラリス種は38〜39本の歯を持ちますが、統合される種は26〜35本まで開きが有ります。ホルランディ種は尾鰭端に黒帯を持たず、尻鰭は黄〜オレンジ、班が明瞭に散ります。rhombeus-groupは大型になる種が多く、尾鰭端に黒帯の走るものにセルラサルムス・ロンベウス(Serrasalmus rhombeus)・セルラサルムス・サンケジ(Serrasalmus sanchezi)・セルラサルムス・スピロプレウラ(Serrasalmus spilopleura)があります。ロンベウス種の眼球が小さいものをマルギナトゥス亜種とする考えが有ります。肩部の班は三角形にならず、尾鰭端の黒帯は辺縁を塗りつぶします。生体は腹部が赤くなりません。ロンベウス種の体長がある型はgibbus種・humeralis gracilior種・medinae種といった名を付けられました。ロンベウス種の老成個体は黒化し、niger種と呼ばれることが有ります。但し通常ロンベウス種はホワイトピラニア・ダイアモンドピラニアなどと称されます。rhombo=菱形。サンケジ種は尾鰭の黒帯は辺縁からやや離れており、肩口の班は三角形になります。生前腹部は赤く、歯は40〜42本も有りますが、口蓋はさほど発達していません。対してスピロプレウラ種は歯は40本以下ですが、口蓋は非常に発達します。見かけがナッテレリ種に似ますが、それでも顎の発達が比べると弱く、上顎から額にかけて伸びた感じが有ります。spilo=過剰な・pleuro=胸膜。尾鰭に黒帯が無い・もしくは薄灰色のものはセルラサルムス・ブランドティ(Serrasalmus brandti)です。fernandezi種が統合されます。
 ピゴケントルス亜属 (Subgenus Pygocentrus)は、最も恐ろしい真性ピラニアグループです。体・顎とも重量感を持ち、下顎が突出します。眼球の後方は凸し、口唇は厚く口蓋はぎざぎざになりません。本亜属最大の特徴は、成魚の脂鰭に条が走ると言う特徴を持ちます。セルラサルムス(ピゴケントルス)・ピラヤ(Serrasalmus(Pygocentrus) piraya)只1種があり、サンフランシスコ川に生息する猛魚です。タドディエレルラ亜属( Subgenus Taddyella)はピゴケントルス亜属と異なり、脂鰭に条が走ることは有りません。背鰭は著しく後方に位置します。セルラサルムス・ナッテレリ(Serrasalmus nattereri)・セルラサルムス・テルネッジ(Serrasalmus ternetzi)があります。肩部に三角の黒班を持つものをnotatus種と呼ばれれますが、これはナッテレリ種に統合されます。
 カトプリオン亜科 (SUBFAMILY CATOPRIONINAE)カトプリオン属 (Genus Catoprion)はCatoprion mento只1種が有ります。偏平な体、鰓蓋の赤班、伸長する背鰭と尻鰭、非常に大きな脂鰭と特徴は多く、見間違うことは有りません。英名をScale-Eater=鱗食い・Wimple-Piranha穴あけピラニアなどと呼ばれます。


 飼育管理:ナッテレリ種と大体同じですが、ポイントが有ります。
 @ダイアモンドピラニア:大型になり、水槽は広いものが必要です。単独性の為、群泳を楽しむことは出来ません(高価ですし)。
 Aイエローピラニア:非常によく人に馴れる唯一のピラニアです。色彩が地味な為に人気はイマイチですが、小犬のように可愛いです。混泳は試したことは有りませんが、水槽さえ広ければうまくいくタイプです。
 Bウインプルピラニア:これは群泳でなくては駄目な種類です。スケールイーター(鱗食い)で有名ですが、普通の餌もちゃんと食います。鰭もカッコイイし、文句無しですね。
 Cエクソドン:ピラニアでは有りませんが、性質はウインプルピラニアと同じです。闘争はしますが、他のピラニアのような破壊力は有りません。ネオンパープルが美しく、混泳相手を他種に求めても無謀ではないので、研究しながら楽しみましょう。最も悪い組み合わせはエクソドン2匹のみで、必ず一方が負け個体となり、衰弱死してしまいます。
 病気:病気には罹り難く、寄生虫知らずです。但し鱗が剥がれ易く、ショックを与えたり網で掬ったり(もっとも大型個体を網で掬うと、カチカチと歯が鳴る度に網がずたずたになっていくため、絶対に網は使わない様にしましょう)は禁物です。
 単独飼育でしたら無いですが、複数飼育では怪我がよくおきます。幼魚の場合、餌不足からは他の個体の眼球を抜くという事態を招きます。防ぐには餌を十分に与えることで、給餌回数もより多めに設定します。中・大型個体では鰭の損傷が見られ、中でも弱い個体に多く見られます。これも給餌の際にその弱い個体が腹一杯食う様、充分な給餌をすることが大切です。
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